博物館見学のキホン
職場で「博物館が好きな人」という扱いを受けている今日この頃なのだが、先日、博物館に行ったことがないという偉い人*1に博物館の楽しみ方について御下問されたので、奉答したことをここにまとめることにする。
そもそも論として、博物館というのは、広義には美術館や動物園に水族館、更に科学館も含まれるのだが、どうも今回はその中でも人文系博物館についての御下問だったようなので、この点についてのみ言及することにする。
特別展と平常展
基本的に博物館には特別展と平常展という、ふたつの展示があることが多い*2。これは、定食屋で例えれば「いつものメニュー」(平常展)と、「季節限定のメニュー」(特別展)の違いと似ている。
平常展はだいたい自分の博物館が所蔵する資料が展示されているので、極端なことを言えばレパートリーが少ないが、学芸員*3も自分の博物館の資料については熟知しているので、それだけ意趣を凝らした展示をすることが多い。また、所蔵している資料がすべて展示されているという例は少ないため、一定の頻度で行われる展示替えによって展示物が変わることがある。
一方特別展は、他の博物館や所蔵者から借りた展示物が混ざることが多い。NHKのアートシーンとかで特集されるのはこちらで、だいたい混んでいることが多く、また入館料も割高になることが多い。とはいえ、本当は海外に行かないと観られない展示物が東京にやってきたりと、展示物同士がいわゆる”夢の競演”をすることが多い。
ちなみに平常展、特別展という名称はあくまで便宜上のもので、例えば東京国立博物館の平常展にあたるものは総合文化展と呼ばれている。
マナー
だいたい入り口に禁止事項が書いてあるのでそれに従えば良いが、一般的に
- 静かにする
- 筆記用具に注意する
→資料を汚さないようにするため。多くの場合、鉛筆は持ち込み可能なことが多い。言えば貸してくれる博物館もある。 - カメラとフラッシュの取り扱い
→著作権的な都合と資料保護のふたつの観点で問題になる。特別展など、複数の所蔵者の資料がある場合は著作権の都合で撮影が全面禁止の場合が多い。また、資料が痛むので、撮影可能な資料でもフラッシュは多くの場合禁止されている(例外もある)。 - 飲食禁止
ぐらいのことを気にしていれば、あまり目くじらを立てる必要はない。
順路
学芸員は一応、順路というのを気にして展示をしていることが多いが、実は絶対的なものではない(とはいえ他人の迷惑にならないように振舞うべきである)。
また、野外博物館ではそもそもはっきりした順路がないことが多い。
音声ガイド
基本的に特別展に多いが、平常展で用意されている場合もある(英語版対応などもある場合がある)。説明を耳から聞けるというもので、だいたい500円ぐらいで貸し出してくれる。ついでに使い方も教えてもらえる(そんなに複雑ではない)。最近は俳優や声優を起用した豪華な音声ガイドもある。
音声ガイドをつけているとひとりぼっちでもさみしくないぞ!
何を観たらいいかわからないとき
なんかいいなと思うモノがきっと大切。
博物館は社会教育施設であり、位置づけは図書館に近い。図書館に行ったとき、来た人がみんな同じ本を借りに来ているということはそう多くはないのではないだろうか。
あるいは映画でも、シナリオが面白そうとか、この監督の作品は好きだからとか、好きな俳優が出演しているからだとか、劇場のあの雰囲気が好きだからだとか、あるいは時間が余ったからだとか、観にくる理由は人それぞれである。
それと同じで、博物館についても、その博物館の目玉資料というのはあるが、「きらきらしていて綺麗」とか、「古い」とか、「変な顔」とか、「なんだか圧倒される」とか、自分が面白いと思ったものを大切にすればいいと考えている。なぜなら、もう教科書とにらめっこして、年号を暗記する必要はないのだから。
独断と偏見で選んだお勧め博物館(関東圏のみ)
東京国立博物館
通称東博。上野公園、上野動物園そばにある巨大な博物館。本館の階段はドラマでもおなじみ。140年余の長い歴史を持つ。
平成館や表慶館の特別展は恐るべき集客力を持ち、有名な日本刀を多く所蔵することから本館も最近は知られるようになったような気がするが、地味にミイラがある東洋館や法隆寺宝物館もおすすめ。
ちなみに公式キャラクターのひとり、トーハクくん(本名:東博)の出身地は上野ではない。
江戸東京博物館
ほぼ東京に特化した展示で、日本橋をはじめとする巨大な模型類が大きな魅力。博物館というよりアミューズメントパーク感があり、そのため修学旅行生も多い。
歴史民俗博物館
佐倉城跡に作られたため、急勾配の上り坂が続くがバスもある。日本史*4と民俗学に特化しており、田舎にあるとだけあって広いので、1日ですべて見尽くすのはかなり難しい。
大阪にある民博と名前が似ている。