カンダチメ史學手習

kandachime11の日本史関係のブログ。博物館などいろいろ。

日本史好きの処世術的なまとめ

「大学で日本史を専攻したって何の役にも立たない」と再三言われたのに日本史を専攻し、学内では「日本史専攻なのに日本史に関わりない仕事をするなんて格好悪い」と耳にタコができるほど言われたのに、色々あって今エンジニアっぽい仕事をしている私の、日本史好きの処世術的なところ。

 

別にこういうことができるからといって、(もっと役立ちそうな学問を差し置いて)日本史を専攻したほうが就活に良いとかそういうことを言うつもりは全くないのだが、むしろ「考えなしに日本史を専攻した/趣味にしてしまった」人向けの記事のつもりである。

 

 

 普段の接し方

歴史アレルギーの人に注意

私がITとかいう理系の会社(もっと言うと、なぜか勉強嫌いが結構多い会社でもある)にいるせいというのもあるかもしれないが、そもそも日本史が好きだとかそういうったそぶりを見せた途端、嫌われるリスクがあるということを承知するべきだというのを最初に書いておきたい。

おおむねその理由は単純に自分が地歴科(とか社会科)に苦労させられたからで、「自分が嫌いなものを好きなこの人は自分とは分かり合えない」という、大の大人とは思えない、非常にしょうもない嫌悪感からだったりするのだが、とにかくそういう人はいる。

そういうわけで、そもそも自分が何が好きかみたいな話はあまりするべきではないような気がする。歴史に限らず、勉強嫌いというのは、結構多い。

 

多くの人は歴史に興味なんてないし、全くわからない

これも重要なことだと思うが、多くの人は、鎌倉時代室町時代はどっちが先だったかなんてことに興味はないし、まして源頼朝足利尊氏は血縁関係にあるなんてことは、誰も知らないといっても過言ではない。

私の知り合いに、文系で修士号を持っている人がいるが、明治の前の元号は江戸だと信じ込んでいた(一応「慶応って知ってる?」と聞いたが、慶応義塾しか知らなかった)人がいたが、そんなものである。

それでも、小学校レベルの歴史の知識(むかし日本の中心は京都だったとか、そのレベル)だったら、一般常識としてとらえてしまって差し支えはないが、中学以上の話は一般常識ではない。

 

地域性の地雷

逆に、詳しすぎる場合も注意が必要になる。

私が出くわした中で最も厄介かつ頻度が高いのは、九州説と近畿説の件である*1。何故か九州人は、「日本史にちょっとでも詳しい」と気づかれた途端、あたりかまわずこの話をしてくる(※個人的な感想です)が、この場合は、自分がたとえ邪馬台国研究でいかに学識が深く、かつ近畿説に確固たる自信があったとしても、絶対に「九州じゃないです」みたいなことは言ってはいけないあと、彼らに野球の話は絶対にしてはいけない。絶対に。

あと、時々あるのは明治維新関係(特に山口県とか福島県とかあの辺り)。これも何か訊かれても、自分の意見は言うべきではない。

はっきり言ってこれは宗教上の問題みたいなもので、郷土史を始めとして、その人のアイデンティティに関わっていそうなことを突っ込まれたら、自分が反対する意見を持っていても、黙って頷いておくべきである。

 

明らかに間違った話をしていても、適当に受け流すべき

司馬氏信者や、怪しい学説にとらわれた人に「〇〇って××だよね」(だいたい突飛な話のことが多い)と言われても、否定してはいけない。自分のプライドが許さないなら「諸説ありますよね」的に躱しておこう。

ただ、はっきりと「よく知らないんだけど徳川家康って本当に鯛の天ぷらで死んだの?」みたいに質問された場合とかは、やさしい言葉で自分の見解を述べてもいいかもしれないが、この場合も断定的な表現は避けたいところ。

 

ちょっと応用

地元の話をするとうける(ことが多い)

「俺は××出身なんだ」みたいに自分の出身地を明言する人に対しては、郷土史について尋ねると喜ぶかもしれない(間違っても自分から知識をひけらかしてはならない)。

あるいは郷土の英雄(で、郷土以外ではあまり知名度が高くなさそうな人物など)について、「私たちの間では××はとても有名でしたよ」みたいに言うのも悪くはない。

郷土の歴史というのは、(上毛かるたのように)いつの間にか常識になっていたり、小学校の校外学習や社会科の授業で習っていることが多く、通史の知識は小学生並でも、郷土史だけはやたら詳しいという人は多い*2。こういう場合、「〇〇が有名と聞いていますが、あまり詳しくなくて……」みたいなことを言ってみても悪くない(実際、たまに本当に詳しい人がいて勉強になる)。

 

自称「歴史好き」に対する対応

自称歴史好きにも色々いて、小説と史実の見分けが付かない人から、「この人はどこでこんなに知識を仕入れてきたんだろう?」みたいな人までいる。歴史好きというのは何故か同族を嗅ぎ分ける嗅覚があるらしく、たぶん絡まれるが、特にあなたが正規教育で日本史を学んでいる人の場合、そのことに嫌悪感を抱く人もいる("正史"は在野にしか埋まっていないと思っている人たちである)ので、注意する必要がある。逆に、もしあなたが大学とかで専攻したわけではないが日本史が好きな人だった場合、大学で日本史を学んだ連中は大概やたら偉そうなので、そういう生き物なのだと哀れんでくださるとありがたいです、はい。

とはいえ、同じ趣味の仲間そのものは悪くない。だいたい好きなもの(時代、地域、人物、文化史方面であればテーマとか)があるので、そのあたりを尊重しながらやっていけたら、立場を超えてきっと良好な人間関係が築けるはずである。

 

 

まあ、そんなところだろうか。

*1:邪馬台国の話である。

*2:例えば日蓮という人物そのものは知名度も高いが、日蓮の出身地が千葉県の誕生寺というところだというのは、日蓮にそれにありに詳しい人か千葉県民しか知らないのではないだろうか?