日本の古本屋体験記
先日、日本の古本屋というサイトを利用してはじめて本を購入したので、流れについて報告したい。
きっかけ
大学3年の頃、ゼミ合宿で同部屋になった大学院の先輩にサイトの存在を教えてもらったのがはじまりだった。
その頃から1冊、どうしても欲しい本があったのだが、すでに絶版になっていて、しかも流通量が少ないので諦めていたところ、偶然見つけて、依頼監視を続けていた。
監視なんてしていないで買えば良いではないかという話なのだが、プレミアがついているからなのか、学生や新卒社会人が手を出すにはかなり値段が高く、しかも数冊が流通していることが分かったので、貯金して買おうと思っていたのである。
が、ある朝突然、たった1冊を残して消えてしまった。
それまで年単位で1冊も減らなかったものが、突然1週間の間に数冊一気に売れるなどにわかに考えづらかったものの、とにかくここでもし買いそびれて見失ったら一生自分のことを許せなくなるだろうと思ったので、衝動買いしてしまったのである。
たかだか昼食代3ヶ月分だし……。
ポチる≠購入する
上記のような事情もあったのでかなり気が焦っていたのだが、そもそも日本の古本屋は
全国古書籍商組合連合会(以下「全古書連」といいます)は戦前からの組織を再興するかたちで1947年に創立された全国古書店の統合組織です。ネット上のホームページ「日本の古本屋」はこの全古書連傘下(2,300余店加盟)の古書店すべての参加を目指しつつ、東京都古書籍商業協同組合インターネット事業部(以下「TKI」と表記します)が代表して運営しています。
という通り、古本屋の集まりであって、amazonのようなひとつの巨大な書店ではない。
そういうわけで、買い物も
ポチる→(在庫確認)→古本屋から連絡がくる→お買い上げ
という流れをとる。つまり、ポチった段階では(表示されているとはいえ)在庫の確認もとれていないし、購入も確定していないのである。ちなみに決済方法はこの段階で指定されるが、クレジットカード番号の入力とかはこの段階では行わない。
もし売り切れていたらどうしようと思ったりもしたが、ここまで来たらあとは祈ることしかできないので、天命を信じ、返事を待つことにした。
本が届いた!
結論から言うと、在庫はあった。
普段店頭に置いていない本なのだそうで、現品の状態(私の場合だと、「少し傷があるが良いか?」と尋ねられた)などのやりとりを日本の古本屋を通して書店とメールで幾度か行い、クレジットカードで決済をした*1。
新品ではないので、どんな状態かのやりとりをしてから支払うというシステムはとても理にかなっていると思う。
数日後、本が届いて、取引は無事に終わった。
自宅にいながら古本を探せる楽しみ
趣味が古書店巡りというのは、文系学生のひとつの理想形のような気がしていた。これはおそらく、休みになると父によく神保町に連れて行ってもらっていたからだろう。
ところが私は、日本史を勉強する人間としては致命傷だと思っているのだが、古本屋があまり得意ではない。古い本に触ると手が痒くなったり、熱っぽくなったり、咳が出たりするのである*2。そういうわけで自然と足が遠ざかってしまっていた節もあるのだが、これなら自由に本を買うことができるし、不当に安い価格で搾取しているわけでもなさそうなので、古本屋街を巡るという古き良き学生の文化に必要不可欠な、様々な古本屋を守ることもできる。
それよりもっと重要な点として、地方格差を減らすことにつながるというのも重要な点だろうと考える。私はありがたいことに自宅から神保町や東京が近いので、丸善本店や三省堂本店などに足を運んだりすることができるが、地域によっては本に触れる機会そのもの少ないところもあるだろう。新しい本についてはamazonでカバーできる部分もあるが、古本にもこのインターネットの恩恵が広がっていくというのは、本当に素晴らしいことだと思う。
古本を買うということ
古本を買うのはこれが初めてではないが、今回買った本は、大学図書館にもなかなかないぐらいの、私の研究領域では間違いなく貴重で重要な本である。
新品の本はどんどん購入することで版を重ね、多くの人の手元に行き渡ってゆくが、こういう、重要であるが大衆受けはしない絶版本の場合、今後増殖させることは難しいだろう*3。私はこの本を守り、そして何らかの形で後世に遺してゆかなければならない*4。それはつまり、私の場合、研究していかなければならないという意味でもある。
頑張らないと……。
*1:私の愛用するAmerican Expressも使うことができた!!
*2:元々体質的に喘息やらホコリアレルギーやら花粉症やらを抱えているので、それらのどれかが反応しているのかもしれない。何故かブックオフだけ大丈夫なのだが、貴重図書がある大学図書館の開架書庫でも時々咳き込んだりしている。
*3:とはいえ私はありがたいことに、それでもこの手のことにかけてはそれなりに運が良いらしく、今回購入した本と同じくらい重要な本(これも出版されて50年ぐらい、ずっと古本しかない状態だった)が、自分が卒論を執筆しはじめる直前、偶然別の出版社から復刻されることになり、奨その初版本を大学生協で購入したことがある。
*4:この件については、「ある時計コレクターのおじさんの話」のことを思い出していた。